障害年金の一種、愛の手帳とは

身体障害、知的障害、あるいは精神障害のある方の生活を支援するという目的で、障害年金という制度があります。障害年金にはいくつもの種類がありますが、その中の一つに愛の手帳というものがあるのです。この愛の手帳制度というのは、国が行っているものではなく、都道府県が主体となって発行しているものになります。

愛の手帳にはどのような特典があり、どういった位置づけの存在なのか、詳しく見ていきましょう。

三種類の障害年金

まず、障害者年金の種類について整理していきます。最も歴史が古いのは身体障害者に対する年金制度で、手や足が使えない身体障害者や、目の見えない視覚障害者、また耳の聞こえない聴覚障害者などに対して支援を行っていくものです。

もう一つ代表的な障害年金として、知的障害者に対するものがあります。この知的障害者年金の成立は、身体障害のそれより遅く、まだ制度としては比較的新しいものです。愛の手帳が国ではなく市町村の発行になっているのも、実はこれが関係しています。

さらに新しい障害者年金として、精神障害者に対してのものがあります。身体障害、精神障害、知的障害、この三つの障害に対する年金制度が日本には存在するわけですが、必ずしも一つしかし受給できないわけではありません。

知的障害者の多くは精神障害も併発していますし、身体障害と知的障害の両方を持っている方も多くいます。そのため、障害がいくつもあり、日常生活を送ることが困難な方は、該当する年金や手当をすべて受け取ることができるのです。

愛の手帳、交付は自治体から

先ほど挙げた3種類の障害年金それぞれに対して、手帳が交付されます。この手帳があることで、障害年金受給者だという証明ができ、それによって様々な特典が受けられます。特典の内容は手帳の種類や障害の程度によって異なりますが、医療機関での支払いの免除や、公共交通機関の運賃の割引、同じく公共の施設の利用料の低減などが代表的です。

愛の手帳とはこのうちの知的障害者にまつわる手帳、つまり療育手帳の別名です。本来、年金制度は国の制度であり、療育手帳の交付についても国が行っていると思われるかもしれません。しかし身体障害とは異なり、知的障害者に対する支援については、国より先に地方自治体都道府県が率先して行っていたため、手帳の交付を自治体が行っています。

ちなみに自治体ごとに療育手帳の呼び名は異なっており、「愛の手帳」というのは東京都や横浜市などで用いられている名称にすぎません。ただ、人口も多く受給者数も多い東京都の「愛の手帳」という呼び名が広く知られているため、療育手帳の別名として用いられるのです。

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愛の手帳のメリット

では愛の手帳には、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。まず一つは、税金の割引が挙げられます。障害者であっても仕事をしている人がほとんどであり、当然そこには収入や所得が発生するでしょう。収入や所得があれば、所得税や住民税が課税されることになります。

しかし、障害者が普通に生活していく上で、いくつものサポートに頼らねばならず、そのぶんお金には余裕がなくなりがちです。そのため、税制上の優遇などがなされます。例えば所得税などにおいては障害者控除がありますし、自動車税なども割り引かれるのです。

これらの適用を受けるには愛の手帳を示し、障害者であることを証明する必要があります。税金だけではなく、普段の生活の中でも手帳を利用することで、いくつものメリットを享受できるでしょう。例えばJRの新幹線などに乗る場合は、障害者割引があります。

また愛の手帳を提示することで、携帯電話やスマートフォンの料金割引も受けられる制度が存在するのです。携帯電話会社の大手3社はすべてこの障害者割引を導入しています。その他にも、地下鉄での交通費の割引や高速道路、有料道路の利用にも有利です。

タクシーや飛行機、バス、レンタカーについても多くの企業が障害者割引を実施しているため、移動手段や通信など、生活に必要な多くの出費を抑えることが可能です。さらに地域によっては水道代の割引などもあるため、自治体に問い合わせてみると良いでしょう。

電気やガスなどと違い、水道に関しては各自治体が管理しているため、このようなことが可能なのです。

愛の手帳はもらわない自由もある

愛の手帳の取得については当然のことですが、審査が存在します。療育手帳は知的障害者に対して交付されるものですので、知的能力に障害があるのかどうか、障害の程度はどのくらいか、ということを勘案して手帳の交付を判断するのです。

愛の手帳の交付について、年齢制限というのはありませんが、通常はどんなに早くても3歳程度以降になります。これは知的障害という障害の性質によるもので、実年齢に比較して知能の程度がどうであるか、ということを調べなければならないからです。

しかし3歳以前であれば、そもそもうまく言語をあやつれないのは当然であるため、知的障害があるかどうかの診断が難しいという事情があります。また愛の手帳は一度交付されても、その後定期的に知能の程度の検査があり、そこで障害があると判断された場合にのみ更新が認められるのです。

特に年齢が若いうちは、一度知的障害者だという認定を受けても、成長が遅いことが原因の場合もあります。そうしたケースでは、数年後に交付を取り消されることもあるでしょう。愛の手帳については、受け取るかどうかは本人や親の自由に任されています。

知的障害者のレッテルを貼られるのが嫌だ、あるいは恥ずかしい、という思いから受け取らない方も存在しますので、その辺りは家族で話し合って決めるのが良いでしょう。ただ、公的な支援などを受ける際に、愛の手帳がないとなかなかスムーズには行かないケースもあります。

軽度の障害であれば手帳なしでもそれほど問題はないかもしれませんが、やはり普通に生活しにくい障害者にとって、お金はとても大切なものです。普段の生活にかかる移動や通信費、あるいは税金などの控除が受けられる愛の手帳は可能な限り利用した方が良いでしょう。

知的障害では程度が変化することも

愛の手帳と一口に言っても、受けられるメリットには差があり、障害の程度によって分けられています。自治体ごとに障害の区分には違いがありますが、基本的には重度、中軽度の2種類となるでしょう。東京都であれば「1度、2度、3度、4度」という区分けであり、1度と2度が重度、3度と4度が中軽度という区分です。

重度であったり自宅での介護が必要な場合は、障害年金の額や手当にも差が出てきますが、身体障害などと違って知的障害については、審査の度に区分が変わるということがありえます。

年齢が低いうちに重度であった知的障害者が、年齢とともに成長が追いつき、中軽度と認定されるのはよくあることです。

このため、障害の程度や区分によって受けられる年金の額や手当、また割引の額などはよく把握しておくことが必要でしょう。